
スーパーやコンビニでお買い物をする際に、商品の包装を意識して商品選びを行ったことはありますか?
食品の包装の目的は、流通する際の作業効率や保管する時などの労力の削減、食品の品質を保持して消費者に安全に商品を届けることなどがあります。その目的のために、包装の素材で採用されているのが低価格で軽量なプラスチック素材です。
プラスチックが発明されてから私たちの生活はとても便利になり、今やプラスチックは私たちの生活には欠かすことができない存在となっています。
しかし、大量消費されたプラスチックが適切に処理されずに海に放出されてしまっています。化石燃料由来のプラスチックは自然分解が難しく、リサイクルされずごみとなったプラスチックが海洋汚染の原因となっています。また、原料が化石燃料のため、燃えるごみとして出されたプラスチックは地球温暖化の原因のCO2を排出しています。これは全て、私たち人間の健康被害という問題にまで発展していて社会全体で取り組むべき課題となっています。
そんな中、世界最大の食品企業ネスレの日本法人、ネスレ日本株式会社は2019年からキットカット大袋製品の外装をプラスチックから紙素材に変更する取り組みを行っています。2022末時点では、1,150トンものプラスチックの削減を行いました!
私たちがプラスチックごみ問題に取り組む際は、プラスチックをどう処理するかの前に、「プラスチックに包装された商品を購入しない!!」と視点を変えていくことも大切です。購入する商品の包装はどんな素材なのか・・・という観点でもお買い物を楽しめるように、今回はネスレ日本株式会社の取り組みをご紹介します!
ネスレがキットカットの包装に紙素材を採用!
ネスレは、2019年から有名なチョコレートブランド、キットカットの大袋製品の外装素材をプラスチックから紙素材に切り替える発表を行いました!そして、2020年にはすべての大袋の製品で紙素材を採用しました。この包装素材の変更の決定は、サスティナビリティの観点からのアプローチであり、企業としても環境に優しい消費を推進するための一環としています。
ネスレってどんな会社?
ネスレはスイスに本社を置く世界最大の食品・飲料会社で、2022年時価総額が約3763億ドル(約54兆4700億円)にもなり、企業規模は世界ランキング23位です。日本を代表するトヨタが31位なので、その企業規模はとても巨大で消費活動においても多大な影響力を持っています!
ネスレが取り扱う商品はインスタントコーヒーのネスカフェやネスプレッソやミロ、栄養補助食品・ペットフードも取り扱い、今回紹介するキットカットもネスレの代表的な商品の一つです。
- 設立 1866年(設立158年 2024年3月時点)
- 事業内容 飲料、食料品、菓子、ペットフード等の製造・販売
- 売上高 13兆3864億円(※2022年末レート)
- 従業員数 35万2千人
- 本社所在地 スイス
ネスレ日本株式会社
- 創業 1913(大正2)年4月
- 設立 1933(昭和8)年6月
- 事業内容 飲料、食料品、菓子、ペットフード等の製造・販売
- 売上高 非上場により非公開
- 従業員数 約2,400人 (グループ各社社員含む)
キットカットとは?
今やネスレの代表的な商品になっているキットカットですが当初からネスレの商品だったわけではなく、1935年にイギリスのロントリー社というところから発売されたチョコレート菓子でした。キットカットが誕生してから約90年もたっており、世界的に愛されるブランドに成長しています。キットカットの特徴は、軽いウエハースをチョコレートでコーティングした点にあり、その独特の食感と味わいは多くの人々に愛されています。
キットカットが日本で販売されたのは1973年からで、現在のようにネスレからキットカットが販売されるようになったのは今から36年前の1988年からとなっています。
キットカットは、“Have a break, have a KitKat.”(休憩しよう、キットカットを食べよう)というキャッチフレーズで広く知られており、休憩時間や受験のお供として多くの方に親しまれています。
サステナブルとネスレ
2015年に国連総会でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されてから、企業においては「サステナブル経営」が求められるようになり持続可能性の高い企業運営が課題となっています。
ネスレは、持続可能な商品開発と環境への配慮を企業理念として掲げている大手食品企業で、特に近年、地球環境に対する影響を考慮し、製品のパッケージングにおいてリサイクル可能な材料の使用を拡大させる方針を取っています。キットカットの包装紙の切り替えも、この取り組みの一環として進められており、サステナブルに対するネスレのコミットメントを示しています。
プラスチック問題と海洋汚染
プラスチックごみ問題は世界的な課題となっており、世界中で年間800万トンものプラスチックごみが海洋に流出しています。さらに、化石由来のプラスチックは自然分解されにくく、海洋に放出したプラスチックは半永久的に存在し続け回収が困難と言われています。更に、海流や日光などによって細かなマイクロプラスチックとなり、海洋生物の体内に取り込まれてしまいます。これは我々人類にとっても他人ごとではなく、食物連鎖により人間もマイクロプラスチックを体内に取り入れてしまっているのが現状です。そんな中、国連を中心に各国も政策によりプラスチックごみの削減に取り組んでいます。
紙素材に切り替えた背景

2019年に環境省が「プラスチック資源循環戦略」を策定し、プラスチックの製造段階から最終的な再利用・再使用までのあらゆる段階での基本原則を発表しました。プラスチックの製造において化石由来ではなく再生可能なバイオマスプラスチックの製造や再生可能な紙素材への変更など、企業においても課題となりました。
そのような背景も相まって環境保護への関心が高まる中、多くの企業が製品の環境負荷を減らすために、持続可能な素材への切り替えを進めています。ネスレがプラスチック削減に注力しているのは、プラスチック廃棄物による環境汚染に対して企業として責任を果たすためで、環境に優しい選択肢を消費者に提供することを目指し、キットカットの包装材をプラスチック素材から紙素材に変更することを決定しました。
環境保護への関心の高まり
SDGzの採択も効果を生み、地球温暖化、海洋汚染、生物多様性の低下など、環境問題への世界的な関心が近年高まっています。このような背景の中で、個人や企業は、持続可能な社会に貢献するために行動を起こすことが求められています。環境保護を強化する目的で、ネスレ以外にも多くの企業が製品の包装や生産プロセスを見直し、環境負荷の少ない材料の使用を進めています。
消費者のエコ意識と期待
消費者の環境に対する意識も高まっており、エコフレンドリーな製品や包装に対する需要が増加しています。エシカル消費という言葉も年々認知度が向上してきており、実際にエシカルな消費活動に取り組む人も増えてきています。そんな人達は企業に対しても、製品の生産や包装においてサスティナビリティを意識した選択を行うことを期待していて、ネスレがキットカットの包装を紙素材に切り替えたのも、このような消費者の期待に応えるための一環です。
ネスレの紙素材導入プロセス

ネスレにとって、キットカットの包装を紙素材に切り替えることは、環境への配慮だけでなく、消費者のニーズに応えるための重要なステップです。このプロセスは、材料の選定から始まり、製品の品質を保ちながら環境負荷を低減する方法の検討が行われています。
材料選定の基準
ネスレは、キットカットの包装に使用する紙素材を選定するにあたり、環境への配慮はもちろん、製品の品質や保存性を維持することも重視しています。選定される素材は、リサイクル可能であること、製造過程での環境負荷が低いこと、そして最終的に製品の鮮度や風味を保つことができることが基準とされています。この厳しい基準を満たした素材のみが、キットカットの新しい包装材料として採用されています。
紙素材の影響と評価
紙素材の導入は、企業のエコフレンドリーな取り組みを象徴しています。消費者の環境意識の高まりとともに、紙素材への関心も高まっており、その影響は多方面に及んでいます。紙素材がもたらす環境へのポジティブな影響や消費者からの反響、さらに他業界への影響を検証します。紙素材の選択は、サステナビリティの実現に向けた一歩として、その価値を高めています。
環境へのポジティブな影響
紙素材の導入は、環境保全活動の重要な一環となります。紙は再生可能な資源であり、適切な管理のもとで生産されれば、森林資源の持続可能な利用に寄与します。また、紙のリサイクル率の向上により、使用済み紙素材の処理が効率化され、廃棄物量の削減に繋がります。これは、自然資源の保護に貢献するだけでなく、カーボンフットプリントの低減にも繋がり、地球温暖化防止にも効果を発揮します。このように、紙素材の活用は、環境へのポジティブな影響をもたらし、地球と共生する未来への大きな一歩と言えるでしょう。
消費者からの反響
紙素材の採用は、消費者から高い支持を受けています。エコフレンドリーな商品やパッケージに対する意識が高まる中、紙素材への切り替えは、消費者のエシカルな価値観に訴えかけるものです。多くの消費者が、プラスチックの使用削減や環境保護への配慮を重要視しており、その結果、紙素材を使用した商品は好意的に受け入れられ、ブランドイメージの向上にも寄与しています。このような消費者からの肯定的な反響は、企業にとっても持続可能なビジネスモデルへの移行を促す一因となっています。
他業界への影響
紙素材の普及は他業界にも大きな影響を与えています。特に、パッケージング業界においては、紙素材への切り替えがトレンドとなりつつあり、さまざまな産業でサステナブルな包装材の開発へと繋がっています。これは、消費者の意識の高まりだけでなく、企業間の競争においてもエコフレンドリーなアプローチが重要な要素となっていることを示しています。また、フードサービスやファッション業界など、直接的な関連が薄い業界においても、紙素材を活用したアイテムの開発が進んでおり、エシカル消費の推進に貢献しています。
導入後の課題と未来

紙素材の広範な導入は、多くのポジティブな影響をもたらしていますが、同時にいくつかの課題も浮上しています。ここでは、紙素材パッケージングにおける主な課題と、それを解決するための取り組み、さらには今後の展望について考察します。未来に向けて、更なるサステナビリティを追求するためには、これらの課題に対処し、持続可能な包装の開発に継続して注力することが不可欠です。
紙素材パッケージングの課題
紙素材パッケージンの導入に際しては、耐水性や耐久性などの物理的特性に課題があります。特に食品包装などでは、内容物を保護するために高い防湿性や強度が求められることが多く、紙素材だけでは要求を満たせない場合があります。また、リサイクル過程においては、インクの除去や品質管理など、技術的な課題も存在します。これらの課題を克服するためには、新たな素材技術の開発やリサイクルプロセスの改善が必要です。
循環可能な包装への挑戦
サステナブルな社会を実現するためには、循環可能な包装材料の開発が欠かせません。紙素材の課題を克服し、さらに環境負荷の低い循環型の包装へと進化させるためには、バイオベースのコーティング材料の利用や、リサイクル時の品質保持を可能にする技術の開発が求められます。これらの技術革新により、使用後も資源として再活用可能な包装材の創出が期待されます。
今後の展望
紙素材を中心としたサステナブルな包装材の開発は、環境に配慮した生産と消費を促進する重要な要素です。今後も技術進化と消費者意識の高まりにより、エコフレンドリーな包装の需要は増加し続けるでしょう。企業はこの変化に応じて、環境への影響を最小限に抑えつつ、消費者のニーズに応える包装材料の開発に注力する必要があります。また、包装だけでなく製品そのものもサステナブルな設計が求められるようになることで、企業の持続可能なビジネスモデル構築に寄与するでしょう。
地球への影響を考慮した素材選び
プラスチックごみが環境問題として大きくクローズアップされている今、多くの企業が環境への影響を考慮した商品開発を進めています。キットカットが包装材質を紙素材へ転換することは、地球への負担を減らすための大きな一歩です。紙素材はリサイクルが可能で、自然分解する速度もプラスチックと比較してずっと速いです。このような素材への切り替えは、地球温暖化や資源の枯渇といった、私たちが直面している環境問題への具体的な対応策の一つです。また、紙素材の採用は、森林資源の持続可能な管理が求められるため、森林認証制度など、環境保護に繋がる取り組みと密接に関連しています。こうした背後にある意識の変化は、私たち消費者にも、日頃から環境への配慮を意識させるきっかけとなります。
紙素材への転換は、ただの包装変更以上の意味を持っています。それは、未来の地球環境を守るために、私たちが今できる選択と行動の重要性を示しているのです。この動きはSDGsの目標の一つである「責任ある消費と生産」にも沿っており、地球への負担を減らす持続可能な社会作りに貢献しています。さらに、キットカットのような身近な製品からの変革は、消費者にとって身近な環境問題への関心を深める良い機会でもあります。日々の選択が地球環境に与える影響を考慮することは、将来の世代のためにも、私たちが意識すべき重要な視点です。
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