
チョコレートは、その甘美な味わいから世界中で愛されている食品の一つですが、その背後にはカカオ農家の厳しい現状が隠されています。
主な生産地であるガーナやコートジボワールの農家では、過酷な労働環境と低い収入が問題となっています。
特に児童労働の実態は深刻で、多くの未成年者が義務教育を受けることなく作業に従事しています。これは疎外された権利の一例であり、ILOやUNICEF、NGOが積極的に解決に向けた活動を行っています。
しかし、問題はそれだけに留まりません。カカオ農園では森林破壊などの環境問題も深刻化しており、持続可能な生産が求められています。また、気候変動による影響も無視できません。
これらの問題に立ち向かうために、フェアトレードやオーガニック認証を取得したチョコレート商品を選ぶことが大切です。この記事では、エシカル消費を通じてどのようにカカオ農家を支援できるのか、詳しく探っていきます。
エシカルファッション購入ポイント
- オーガニック書品
- ビーガン商品
- アグロフォレストリー農法による栽培
- フェアトレード商品
- レインフォレスト認証製品
チョコレートとエシカル消費の関係

チョコレートは世界的に巨大ビジネスであり、世界市場10兆円規模で2025年には15兆円を超えると言われています。
そんな世界中で愛されているチョコレートの原料となるカカオ豆の生産には、貧困や児童労働などの深刻な問題が存在します。
これに対して、近年はフェアトレードやオーガニック認証のチョコレートを購入するといった消費行動が広がりつつあります。
ここではチョコレートの歴史と日本のチョコレートの消費量、そしてカカオ農家が抱える諸問題をご紹介します。
チョコレートの歴史
チョコレートの原料となるカカオの歴史は意外と長く、紀元前3500年頃まで遡ります。紀元前1500年頃には中南米でカカオの栽培が始まりました。

かつてカカオは
- 儀式としての捧げもの
- 薬
- 貢物
- 貨幣 としても利用されておりました。 カカオ飲料としても利用されていましたが大変高価なものだったため、摂取できたのは王族・貴族・上流階級などの特権階級だけでした。
1500年ごろにスペインにチョコレートが伝わり、1600年頃にイタリア続いてフランスへと伝わりヨーロッパ中に広まりました。
植民地時代のカカオ産業は旧植民地の人々により強制的にカカオ栽培を強いられていました。
そして、上流階級だけに食されていたチョコレートも19世紀には産業革命の影響で一般層にも広まり、今日のような多様なチョコレート文化が形成されました。
スペインに渡る | 日本チョコレート・ココア協会チョコレート・ココアの世界の歴史です。スペインに渡ったカカオの話。ヨーロッパにチョコレートをもたらしたフェルナンデス・コルテスの話をご紹介しています。
日本のチョコレートの消費量
日本人はチョコレートが大好きで、年間2.1kg(2020年)を消費しています。この量は、バレンタインデーを中心に大幅に増える傾向がありますが、実際には日常のおやつや贈り物としても広範に利用されています。
日本におけるカカオ豆の国別の輸入量(2020年)は、
- 1位:ガーナ 38,564t
- 2位:エクアドル 3,702t
- 3位:ベネズエラ 2,357t
- 4位:コートジボワール 1,584t
となっており、日本に輸入されるカカオ豆の約7割が西アフリカのガーナとなっています。
日本のチョコレート市場は、世界的には少々小さいですが、ユニークな商品開発や季節感を活かした販売戦略が特徴です。国内のチョコレートの売上高のシェアでは、明治・ロッテ・江崎グリコ・森永製菓の4社で全体の6割を超えています。
近年では、日本でもフェアトレードやオーガニック認証のある商品も増えてきており、大手企業の取り扱いも増えて消費者の意識も変わりつつあります。
貧困が生むカカオ農家の現状
普段何気なく購入しているチョコレートは原料となるカカオの生産において多くの社会問題が存在しています。
世界のカカオの主要生産国であるコートジボワールやガーナなどでは、農家の多くが貧困に苦しんでいます。気候変動の影響も大きく、世界的な需要増に反してカカオ収穫量の減少が深刻な課題となっています。
さらに、低価格での買取や中間業者による搾取、多くの子どもたちが危険な児童労働に従事している状況も見逃せません。15歳未満の子どもが教育の機会を奪われている現状は、国際労働機関(ILO)やNGO団体(NGO ACEなど)、UNICEFなどがそういった子供たちの支援を行う理由の一つです。
持続可能なカカオ栽培には、農家の収入向上を支援し、現在の負のスパイラルから脱却する義務教育の確保が欠かせません。

貧困地域で児童労働を強いられている子供たちは、義務教育を受けていない親が原因の一つにもなっています。その子供たちも同様に児童労働により教育を受けられないと、児童労働による負の連鎖が発生してしまいます。
チョコレートの裏には、こうした複雑な現実が広がっているのです。これを知ることで、私たちもエシカル消費を考え直すきっかけになるかもしれません。
チョコレートとエシカルな視点から見るカカオ農家の問題

チョコレートの甘い味わいの背後には、カカオ農家が直面するさまざまな課題が隠れています。
その地域に属するガーナやコートジボワールといった主要な生産国では、その影響が大きいです。
カカオは地元の農家にとって重要な収入源ですが、同時に多くの問題も抱えています。
エシカルな視点から、私たちはこの問題にどのように向き合うべきなのか、考えてみましょう。
カカオ農家の労働環境
カカオ農家の労働環境は、過酷な一面があります。収穫は手作業が中心で、長時間にわたって重労働を行う必要があります。
特にガーナやコートジボワールでは、農家の多くが生活に必要な設備やインフラが整っていない地域に住んでいます。
そのため、カカオ豆の価格が低いと、農家の収入が不安定になり、生活の質が低下してしまいます。
実際にカカオ農園で働く多くの方たちが世界銀行が定める国際貧困ライン(1日一人当たり2.15ドル未満で生活)を下回り、「極度の貧困」状態に置かれています。
カカオ農園の2/3が貧困状態であるとも言われています。
これはチョコレート産業の構造が原因で、カカオ農家はチョコレート産業全体の利益の6%しか得ていないと言われています。
この原因は、買い手側が価格の変動を抑えて安定的に購入するためにカカオ豆は先物市場で価格が決定するためです。これにより原価割れも発生する事態となっています。
開発途上国ではカカオ生産により生活をしている人が1400万人もいます。公正な取引やフェアトレード商品の購入は、彼らの収入の安定に繋がりこれらの問題を改善するための1つの方法となります。
児童労働の実態
世界中で児童労働を強いられている子供は約1億5,200万人にものぼり、世界の子供の10人に1人という計算となります。
児童労働が起こってしまう一番の原因は「貧困」です。社会の慣習や文化的背景、行政サービスが未整備などそれ以外の原因も考えられますが、多くの場合が経済的な貧困がほとんどであると言われています。
カカオ農業の児童労働も大変深刻な問題です。カカオ生産国1,2位のコートジボワールとガーナでは、
- コートジボワール 79万人
- ガーナ 77万人
もの子供たちが貧困などを原因に労働に従事しており、学校に通う機会を失っています。
これらの地域では、義務教育が完全には行き渡っておらず、貧困のために子どもたちも収入を得る手段として働かざるを得ない状況があります。
さらには人身売買による児童労働の提供も行われていると言われています。
私たちが普段口にしているチョコレートは、児童労働が行われているカカオ農園の商品かもしれないと想像するとエシカルな消費の重要性を強く感じます。
カカオ農園による森林破壊
他の産業と同様でカカオ生産も農園の拡大に伴い、森林の伐採が進んでいます。新たな農地を求めて、熱帯雨林が破壊されることが多く、この状況は地球環境にも影響を及ぼします。
ガーディアン紙は、世界のチョコレート産業が西アフリカで壊滅的な規模の森林破壊を引き起こしていることを明らかにしました。
カカオ生産の2大生産国のコートジボワールとガーナも森林伐採の問題は深刻で、かつてはコートジボワールの国土の1/4が熱帯雨林で覆われていましたが、現在は4%未満まで熱帯雨林が減少しています。
熱帯雨林は多様な生物が生息しているため森林破壊により多くの生物の住む環境が失われてしまいます。森林破壊は地球温暖化の原因や生物多様性の損失という様々な社会問題へと繋がります。
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農薬による土壌汚染・健康被害
カカオ栽培においては、農薬の使用も問題です。過度な使用は土壌を汚染し、農家の健康にも悪影響を与えることがあります。
2019年にガーナから輸入されるカカオ豆に基準値を4倍も超える農薬が検出されてケースもありました。
農薬の使用により土壌が汚染されると、カカオ豆の品質にも影響を及ぼす可能性があります。持続可能な農法や有機栽培の導入は、カカオ農家の健康と土壌の保護に寄与します。
各国のNGOや地域団体が、農家を教育し、農薬の使用を減らす取り組みを進めています。
パーム油による社会問題
カカオ生産と直接は関係しないものの、関連する産業としてパーム油の生産も社会問題となっています。
パーム油は「見えない油」とも言われていて、原材料名では「植物油」「ショートニング」「マーガリン」「界面活性剤」と記載されており、その存在をあまり意識されません。
パーム油を一番使用しているのが食品で多くの商品にパーム油が使用しされており、チョコレートも例外ではありません。
カカオ生産と同様でパーム油の農地拡大により森林破壊が起こっていて、地球温暖化や生分解性の損失に繋がっています。
年々パーム油の需要が増えることで、そこでも森林破壊が進行しておりチョコレートの生産においても、この問題は無視できません。
気候変動によるカカオ生産の影響
気候変動はカカオの生産にも影響を及ぼしています。降雨パターンの変化や気温の上昇により、カカオの栽培が困難になっている地域もあります。
カカオ豆の生産には赤道近くの高温多湿な地域が適切で、赤道南北約20度の熱帯雨林が最も適しています。
しかし、気候変動の影響によりこれらの地域に位置するコートジボワールやガーナが、カカオの栽培に適さない地域になる可能性が指摘されています。
実際にガーナでは気候変動の影響により2022年度の生産量が前年比で34.2%も減少しています。
さらに、国際カカオ機関(ICCO)は2022年に世界で23万トンのカカオ豆の供給不足が発生していると言及しています。
気候変動に対する対策は、カカオ農家の収入安定にもつながるため、国際的な支援が必要とされています。
私たち消費者も、環境に優しい選択をすることで、持続可能な社会の実現に貢献できるのです。
エシカルチョコレートの選び方

エシカルチョコレートを選ぶ際には、環境や人権に配慮した製品を意識することが大切です。
特に開発途上国での児童労働や搾取問題に関連するチョコレート産業では、フェアトレードやオーガニックなどの認証がおすすめです。
これにより、美味しいだけでなく、人々に優しい選択が可能になります。貧困地域の農家を支援するための選び方を学びましょう。
オーガニック商品
オーガニックなチョコレートは、化学肥料や農薬を使用せずに栽培されたカカオ豆を使用しています。
これにより、自然環境を保護しつつ、高品質なチョコレートを楽しむことができます。
例えば、オーガニック認証を受けている製品は、カカオ豆の栽培過程で自然環境に配慮しており、消費者も安心して口にすることができます。
農薬を使用しないことは土壌汚染を防ぎ、水の汚染も行われません。農園で働く方たちや土壌・水質にも良い影響を与えて持続的な農業に貢献することができます。
ビーガン商品
ビーガンとは乳製品や卵を含んだ動物性食品を食べないことを指します。
世界中で地球温暖化や水不足などが問題となっていますが、これらの原因の一つに家畜によるものが挙げられます。
また、家畜として育てられる動物たちに対する動物福祉という観点もビーガンを志向する一つの要素となります。
日本で販売されているミルクチョコレートやホワイトチョコレートは乳製品を使用しています。
日本にはまだ多くありませんがナッツミルクやライスミルクなどの乳代替製品を使用したチョコレートを購入することもエシカルな選択の一つです。
ビーガン商品を選ぶことで、動物由来の原材料を避けたい人にも適しています。
アグロフォレストリー農法による栽培
アグロフォレストリー農法は、森林と農業を組み合わせた持続可能な栽培方法で「森を作る農業」と呼ばれています。
ひとつの土地に樹木と農作物を一緒に植え、植物同士や生態系の相互作用によって、農業と林業・畜産業を同時に行うことを指します。従来の農業のように、森林を切り開いて畑を作る必要がないので土地が荒廃する心配もありません。
アグロフォレストリーとは?日本の具体例とメリット・デメリットを解説アグロフォレストリーとは、農業と林業・畜産業を同時に行うことです。アグロフォレストリーにはメリットも多くありますが、課題も残っています。日本のアグロフォレストリーの農法の具体例を交えて簡単に紹介します。
この方法を採用することで、農家は森林を守りながらカカオを生産することができます。
特にガーナやコートジボワールのような開発途上国では、この農法が地域経済と環境の両方に貢献しています。
農家は気候変動に適応しつつ、森林伐採を減らし、生物多様性を保護することが可能になります。
この方法で育ったカカオ豆を使ったチョコレートには、環境へのやさしさが詰まっています。
アグロフォレストリーミルクチョコレート | 株式会社 明治 - Meiji Co., Ltd.「森をつくる農業」と呼ばれるアグロフォレストリー農法で作られたブラジルトメアスー産カカオ豆をカカオマス中に使用した、明治アグロフォレストリーミルクチョコレートの公式サイトです。
フェアトレード商品
フェアトレード商品は、公平な貿易を通じて、開発途上国の生産者や労働者の生活向上を支援します。
フェアトレード認証を受けるためには、安全な労働環境で生産されることが必須となります。また、環境面での認証も厳しく、森林破壊や危険な農薬の使用なども認証基準となり、環境を守りながら持続可能な活動によることが前提となります。
こうしたフェアトレード商品を選ぶことにより児童労働を削減し、公正な価格を提供することで、生産者の権利を守ります。
フェアトレード認証を受けたチョコレートを購入することで適正な対価が途上国の農家や子どもたちに還元されて生活支援に貢献することができます。また、その地域のインフラ整備や教育環境の整備にも繋がり、貧困からの脱却のキッカケにもなります。
特にガーナやコートジボワールなどで生産されたカカオ豆は、多くの支援が必要です。あなたの買い物で、エシカルな選択を増やしましょう。
レインフォレスト・アライアンス認証製品
レインフォレスト認証は、生物多様性の保全活動と、サステナビリティへの取り組みを行う、国際的な環境保護団体「レインフォレスト・アライアンス」が管理する環境ラベルです。
主に農業において森林や生態系、土壌や水資源の保全や労働環境・生活水準の向上を目的とした厳しい基準を満たした製品に与えられるものです。
認証を受けたチョコレートを選ぶことで、消費者は自然環境の保護にも貢献できます。また、農家にとっても森林との共存が強化され、より自然に寄り添った生産が可能になります。
買うときに、環境と調和した選択を心がけましょう。
ホームより健康な土壌と苗木から、私たちの農業ソリューションはその原点から始まりました。
認証マークの見分け方
認証マークを見ることで、簡単にエシカルなチョコレートを選ぶことができます。
ここまでご紹介したフェアトレードやレインフォレスト・アライアンス、オーガニック認証など、様々なマークが製品に付けられています。
これらは、商品がどのように生産されたかを示し、消費者が安心して選べる指標となります。マークの形や色をチェックし、実際にどのような基準で認証されているのか、一度確認してみましょう。
エシカルな選択は、小さな行動が大きな変化につながる最初の一歩です。
多くの未成年者が義務教育を受ける権利を奪われ、農園での危険な労働環境に従事しています。
国際労働機関(ILO)やUNICEF、NGOなどが児童労働の削減に向けて支援を続けていますが、根本には地域の貧困やカカオ豆の低価格問題があります。
さらに、気候変動も生産環境や収穫に影響を及ぼしています。そのため、消費者はフェアトレードやオーガニック、有機栽培による認証商品を選ぶことが重要です。
これにより、生産者が適正な価格で原材料を提供され、地域の収入向上や子どもたちの義務教育推進に貢献できます。
お気に入りのショップでそれらのチョコレートを選ぶことが、開発途上国の農家を支援し、持続可能な栽培につながります。
消費者の意識が変われば、世界中の問題解決への一歩となるでしょう。
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